担当コンサルタント:福島 光伸
製造業などの職人気質の社長が陥りやすい傾向にあるのが、社長自らが経営よりも実務に注力してしまうパターンです。
化学製品を製造している、とある会社の事例ですが、社長は化学の知識は大変豊富なのですが、経営に関してはエネルギーをあまり感じられない、技術肌の方でした。
ご本人もそれをちゃんと自覚していて、経営は2名の若い取締役に任せようとしていたのです。
セミナーを通じてご縁ができたのですが、リーマンショックにより業績が一気に半分ほどに。コンサル導入どころではなくなってしまい、まずは経営を立て直しなんとか目処がついた時点で、改めてご依頼をいただきました。
社長の希望は、「IPO(新規株式公開)ができるような企業にしてほしい」というもの。経営戦略そのものについては、取締役の2人に任されていましたが、彼らもまだ40代、30代と若く、経営のノウハウは持っていません。そこでサイエスが、がっつりとサポート体制に入ることにしたのです。
まずは全社方針を策定するため、今後の展開をどうしていけばよいかを、泊まりがけで徹底的に話し合いました。本音の勝負ですから、ときには方針をめぐって言い合いにもなります。もちろん、礼は尽くしますが(笑)。お互いに信頼していますから、それで関係が壊れることはありませんね。むしろ、彼らの熱意がどんどん高まっていったように感じていました。
一番頭を悩ませることになったのは、組織が組織の体をなしていなかったことでした。組織の長が頼りにならず、別の人が指示をしているような部があれば、品質保証の部門が製品を作っていたり、開発が部品を購入していたり。
そこでまず、組織の役割を明確にして、それぞれの役割や機能をしっかりと認識してもらうというレベルから入っていかなければなりませんでした。
その後の年度計画作りに関しては、比較的うまくいったと思います。今後は、計画を実行して軌道に乗せていくことが、彼ら幹部の使命であり頑張りどころですね。
社長に関しても、たとえ経営手腕は持ち合わせていなくても、2人の素質を見抜いて活躍の場を与え、育て上げられた点は素晴らしいと思います。経営者のなかには、ご自分で会社を守ってきたという自負があって、欠点を認められない方もいますから。
我々は、そういった社員では言えないことを、ときには経営者に申し上げなければならない役割も担っています。しかし、ただ言えばいいというものではありません。目的はあくまでも、変えることですから。本音をぶつけ合える関係でないと、本当のコンサルは難しい。ですが、その先に必ず良い関係が生まれます。
「経営を引き継ぐということは、負債も引き継ぐこと。その不安はとても大きいものでしたが、サイエスさんにお世話になった今、そういった気持ちはなくなりました」
時期社長候補の幹部からいただいたこの言葉が、それを証明してくれていると思います。