担当コンサルタント:福島 光伸
戦後に起業し、強力な個性とパワーで会社を成長させてきたカリスマ社長と呼ばれる方々は、今やその多くが70代から80代を迎えています。事業継承を機にコンサルをご依頼される企業がここ最近で増加しているのは、こうした時代背景もあるのかもしれません。
サイエスのセミナーに参加され依頼を受けた輸入雑貨の卸売会社も、まさにこのパターンでした。当時は、社長の息子さんが専務を務めていて、その息子さんが社長に就任するということでご本人から相談がありました。
新社長は留学経験もあり、修士号を持っていて論理的。会社に対するビジョンもありましたが、それをどうやって具体的に経営に反映させればよいのかが、わからなかった。そこでサイエスが、実現のための仕組み作りをお手伝いすることになったのです。
まずはヒアリングと状況分析ですが、業績は悪くなく、経常利益率も高く蓄積利益も潤沢でした。しかし、先代が構築したビジネスモデルはどんどん古くなっていき、売上は徐々に下がっています。それは新社長も自覚していました。蓄えはありますが、このままでは未来が見えない。
そこで、従来の事業はキャッシュを生み出す柱として大事にしながらも、異なる業界にターゲットを変え新たな事業を構想していきました。
そしてそれを推進する責任者を選定し、その下に開発部門、販売部門といった組織を配置したのです。
販売ターゲットを変えることに加え、ビジネスチャンスを広げるためにミクロのニーズにも着目しました。新業界特有のニーズを掘り起こし、ビジネスへと変換させていきました。
結果、現在では従来の事業と新事業の業績比率は完全に逆転しています。決して、サイエスがビジネスモデルを作ったわけではありませんが、作るヒントは差し上げられたのではないかと思っています。
高度経済成長期の勢いを生かし、会社を成長させた前社長、それを今の時代の流れに対応させた現社長。事業継承を組織改革のチャンスと捉えて取り組んだことが、良い結果を生み出しました。
このように多くの中小企業は、業績改善の可能性の多くを秘めています。コンサルタントの我々が言うのもおかしいですが、高度な経営戦略論よりもっと前に、やれることがたくさんある。
現代は、ひと昔前よりもはるかに経営が複雑化・多様化し、難しくなってきています。それでも、「成功の種」は必ずその会社のなかにある。今までそれがなかった企業など、ありません。単に埋もれていて、出てこないだけなのです。